IC 1613(銀河・くじら座)
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s (新改造), ISO12800, 30s x 34=17m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2020/10/20, 22h 32m, +6.0℃, 東御市 / 観測所, 視野角: 52 ′ x 35 ′ ↑ N
IC 1613(銀河)明るさ:9.9 mag, 大きさ:16.2′ x 14.5′, 分類:IB(s)m , z 0.000781, RA 01h04m47.79s DEC +02d07m04.0s (J2000.0)
IC 1613は、我々の天の川銀河と同じ局部銀河群に所属する矮小不規則銀河です。この銀河までの距離は、その中にRR Lyr型変光星が観測できることと、地球からこの銀河までの視線方向に星間物質が非常に少ないことから、特に正確に測定されていてその距離は730+-20Kpc(238万光年)と計測されています。
上の写真でもわかるように、この銀河の最大の特徴は、銀河の北東部に赤く見える巨大な複合電離殻の存在で、明るいHII領域やこの銀河で知られる唯一の超新星残骸などから構成されています。この領域は、近い距離にあり高い分解能で観測可能なことと、IC 1613が渦状銀河ではないことから、銀河円盤の影響を受けない星形成領域のふるまいを詳しく知ることのできる場所として注目されています。
IC 1613 北東部の多殻複合電離体 視野角: 12 ′ x 8 ′ ↑ N
6m SAO望遠鏡のファブリ・ペロー干渉計で得られた多殻複合体の単色Hα像
R1-R9とR13:Valdez-Guterrezら(2001)のリストにある電離殻
矢印 a:シェルR1の境界にある初期型超巨星のチェーン、矢印 b:Lozinskayaら(2002)によって同定されたOf型星、矢印 c:IC1613にある唯一の超新星残骸、矢印 d:Hodgeら(1990)のH II領域リストにある天体No.40a, b
この複合体の星の集団は、約20の若い星の連合体や星団で構成されています(Hodge 1978; Georgiev et al.1999;)。この多殻複合体と豊富な恒星群は、この銀河系内で唯一の継続的な星形成の場です。このIC1613の激しい星形成の領域は、おそらく非常に若くて小さな領域の巨大連合体と考えられます(Lozinskaya 2002a)。(Detailed kinematic study of the ionized and neutral gas in the complex of star formation in the galaxy IC 1613. LOZINSKAYA T.A., MOISEEV A.V., PODORVANYUK N.Y. 2003AstL…29…77L 参照、図転載)
*Wikipediaの記事について
Wikipediaの英語版は、信頼性が高く天体の用語や銀河の概略について調べるときに大変重宝しています。しかし、時々注意しなければならないのは、おそらく編集者が米国人であるためかその内容は米国の研究成果に偏りがちなことです。英語版ではヨーロッパやロシアなどでの研究成果が紹介されない場合があります。IC 1613の項目では、ロシアが成果を上げている多殻複合電離体についてはまったく触れられていませんでした。英語版の記事をほぼそのまま日本語訳して掲載している日本語版(内容の古い独自記事よりは、ましですが)を見ると、天邪鬼な爺は、こんなところにも世界情勢が影響しているのかも?と勘ぐりたくなってしまいます。
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