Sh 2-190(散光星雲・カシオペア座)

Sh 2-190(散光星雲)
TS FSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70 (改造), HEUIB-II, ISO3200, 120s x 16= 32m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2021/11/04, 00h 33m, +2.0℃, 東御市 / 観測所, 視野角: 4.2° x 2.8°(広角カメラ), ↑N

Sh 2-190 (散光星雲), 明るさ:–mag, 大きさ: 150′, 分類: HII, RA 02h 33m 22.7s DEC +61d 26m 32s (J2000.0)

Sh 2-190は、ハート星雲という愛称で呼ばれる大きく明るいHII領域です。通称名としてIC 1805と呼ばれることもありますが、厳密にはIC 1805はハートの中心にある散開星団のことです。シャープレスはこの領域を一つのSh 2-190という領域にまとめていますが、画像からもわかるように、星雲は、IC 1805を中心とするハート型の大きな領域(W4)と、西北端のNGC 896(散光星雲)周辺の小さな領域(W3)の2つに分けられます。2つの領域はW4、W3と呼ばれる分子雲の領域と重なり、それぞれ活発な星形成領域となっています。

Rチャンネル画像(だいたいHα)

Bチャンネル画像

広角カメラのカラー画像からR画像とB画像を抽出してみましょう。R画像は使用したフィルターの特性から、ほぼHα光による画像となり、Sh 2-190のHII領域の広がりがわかります。Bチャンネルの画像では、Hα輝線の光は除去されるので、判別しにくかった散開星団や反射星雲などが明瞭になります。星雲の中にはいくつもの若い星団があり、これらの星団はOB星を多数内包しCas OB6星群の一画を担っています。B7型の恒星HD 14817の周辺には、青い淡い反射星雲が広がっていることがわかりますが、Simbadには該当するものはなく無名です。

Sh 2-190(W3/W4複合体)は、銀河系内のペルセウス腕にあり、距離は2.3kpcとされます( Massey et al. 1995a )。W4は直径約1度の星雲殻構造をもっています、この星雲殻はペルセウスの煙突と呼ばれるスーパーバブル(後述)の底に位置します。W3は、W4殻の北西端にある直径18分ほどの小さなHII領域です。W3はさらに小さな3つの領域に分けられるとされています。

星雲までの距離については、おおよそ2.0Kpc〜2.3Kpcとされています。 赤化を差し引いた色等級図から、W4, IC1805星団の距離モジュラスは11.9±0.2mag (d=2.4±0.2 kpc) と推定され、これは電波VLBAから測定した近くの巨大星形成領域W3(OH)までの距離より遠いことがわかった(SUNG H. 他、2017ApJS..230….3S)とする研究もあります。

スーパーバブル・ペルセウスチムニー

複数の研究者のグループ (Tomisaka & Ikeuchi 1986; Mac Low & McCray 1988; Mac Low, McCray, & Norman 1989) は、高エネルギーのバブルは銀河円盤のガス層を突き破り、銀河ハローに高温ガスを運ぶ「チムニー(煙突)」を形成すると予想していました (Nor-man & Ikeuchi 1989)。このようなチムニーは、ハローの維持に重要な役割を果たすと考えられています。
銀河系内のチムニーを観測することは困難でした。しかし、Normandeau, Taylor & Dewdney (1996)は、HII領域W4の中心にある非常に若い散開星団IC 1805の上空でH Iの円錐状の空洞を観測しました。この空洞 L31 は、円錐が開いているように見えることから、彼らはこの構造を銀河のチムニー(煙突)と解釈しました。Dennison ら (1997) は、この煙突が、銀河面上230 pcに広がる細長いが閉じた殻の下部であり、Hで見えることを発見しました。最近では、Reynoldsら(2001)が銀河系平面から1300kpcの高さにあるさらに大きなループを同定し、Dennisonらのスーパーバブルがその下部であることを明らかにしました。(参照:M. S. Oey  他、HIERARCHICAL TRIGGERING OF STAR FORMATION BY SUPERBUBBLES IN W3/W4 2005 AJ)

1997年のチムニー・スーパーバブルの画像を見ると、これはおそらく現在のアマチュアの機材であれば撮像確認ができそうな対象です。機会があればチャレンジしてみることとしましょう。

カシオペア座西部  ファインディングチャート
Pentax PDA50-135mmf2.8(60mm f4.5), Pentax K5IIS(ノーマル), フィルター無し, ISO3200, 120s x 16=32分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2021/11/04, +2.0℃, 東御市・観測所 ↑N

 

<以下過去の投稿>

Sh 2-190(NGC 896, IC1795, IC1805, 散光星雲・カシオペア座)

sh2-190-fsq-dsf-1701Sh 2-190(散光星雲) 150′
タカハシFSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70(改造)、フィルター無し, ISO3200, 60s x 10, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2017/01/05 東御市・観測所, 視野角:4.24° x 2.81° ↑N

sh2-190-bkp-1701IC 1805(散開+散光星雲) 6.5mag 1°  III 3 p n
BKP300 1500mm f5, MPCC-MK3,  HEUIB-II, Sony α7s(新改造)フルサイズ, ISO12800, 30s x 12, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2017/01/05 東御市・観測所, 視野角:77′ x 51’↑N

sh2-190-bwカシオペア座のその形からハート星雲と呼ばれる散光星雲です。画像は上が北なのでハートは横に寝た形になっています。中心部のIC1805付近を1500mmで拡大すると暗黒星雲が複雑に絡み合った様子が見えてきます。

<以下 2018年4月13日 投稿>

Sh 2-190(IC 1805, IC 1795, NGC 896・散光星雲・カシオペア座)

Sh 2-190(散光星雲), 光度:– mag, 直径:150′, 分類:E
タカハシFSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70(改造)、HEUIB-II, ISO3200, 90s x 8=12分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2017/11/16  -2℃, 東御市・観測所, 視野角:4.2° x 2.8° ↑N(広角カメラ)

Sh 2-190(散光星雲), 光度:– mag, 直径:150′, 分類:E
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s(新改造), ISO12800, 30s x 24=12分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2017/11/16  -2℃, 東御市・観測所, 視野角: 77′ x 51′  ↑N

Sh 2-190は、その形からハート星雲という愛称がある散光星雲・HII領域で、IC 1805, IC 1795, NGC 896を含むおよそ2.5°の広がりを持つ大きな星雲です。この星雲は天の川銀河のペルセウスアームの腕の中にあり、中心にあるMelotte 15と呼ばれる生まれたての散開星団からの放射により発光しています。

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