NGC 4203(銀河・かみのけ座)

NGC 4203(銀河)
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s (新改造), ISO12800, 30s x 23=12m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2021/04/08, 22h 19m, +1.0℃, 東御市 / 観測所
視野角: 52 ′ x 35 ′ ↑ N

NGC 4203(銀河)明るさ:11.8 mag, 大きさ:3.4′ x 3.2′, 分類:SAB0-:;LINER Sy3, z 0.003623, 推定距離:約6千万光年, 18.717Mpc(NED), LGG 279, RA 12h15m05.0554s,  DEC +33d11m50.382s (J2000.0), 視野角:  12′ x 8′ ↑ N

NGC 4203は、近距離(6,000万光年)にある平凡なレンズ状初期型銀河に見え、その距離から推定する実際の大きさはそう大きくないだろうと推測できます。しかしNEDのデータを見ると、LINERとセイファート3に分類される活動銀河核を持ち、棒構造と渦状構造を併せ持つレンズ状銀河という、古典的分類ではとても表現しにくい銀河であることがわかります。

この銀河は、様々な方向から研究されている銀河で、最新(2015年)の研究 Star formation in the outer regions of the early-type galaxy NGC 4203. YILDIZ M.K., SERRA P., OOSTERLOO T.A.他 (2015 MNRAS)、によれば、

図1. (左)NGC 4203のSDSS gバンド 画像(右)new deep WSRT HIの画像。バーはH Iの画像を示しています。

NGC 4203は、非常に大きな低柱密度の中性水素H Iディスクに囲まれた近傍にある初期型銀河です。この研究では、NGC 4203のガス円盤における星形成率を、紫外線、光学深度画像、赤外線のデータを用いて研究しています。その結果、H Iディスクは半径約1〜3レフ(有効光学半径)の内側の星形成リングと外側のディスクの2つから構成されていることが確認されました。外側の円盤は内側の円盤の9倍の質量を持っています。内側のH Iリングの位置では、半径〜3 レフまで続く渦巻き状の構造を検出しました。この2つのガス成分は、金属量とダストの含有量が異なるため、星形成率が異なっていると思われます。内側のガスは、後期型銀河の内部領域とほぼ同じ星形成率を持っています。外側のガスは非常に低い星生成率ですが、渦巻銀河や矮小銀河の外側の領域と同じような星生成率です。この違いは、内側のH Iリングでは恒星の質量放出、外側のH Iディスクでは銀河間物質からの降着など、2つの成分のガス起源が異なることで説明できると思われます。また、外側の H I ディスクの星生成率は NGC 4203 の形態を変えるほど高くはなく、H I ガスの枯渇時間は非常に長くなっています。

近年、ほとんどの初期型銀河は恒星ディスクを持ち、レンズ状銀河や楕円銀河などの初期型銀河ファミリーは渦状銀河と同様のバルジとディスク比を持つと結論付けられています (Cappellari et al. 2011; Laurikainen et al. 2011; Kormendy & Bender 2012; Krajnovic ́ et al. 2013; Weijmans et al. 2014)。また、Hβなどの輝線の狭帯域イメージング、ダスト吸収のイメージング、惑星状星雲や球状星団の分光観測など、様々な手法を使って初期型銀河の恒星ディスクは検出されています (Romanowsky et al. 2003; Sarzi et al. 2006; Pota et al. 2013)。これらの結果を総合すると、銀河の進化は、初期型でも後期型でも、恒星ディスクの成長と存続を可能にするプロセスによって支配されていると示唆される。

銀河団の外にある初期型銀河の約20%では、中性水素H Iが低柱密度のディスク状やリング状に分布しており、その典型的なサイズは数十kpcと、銀河本体よりもずっと大きいことがわかっています。もしガスの柱密度が十分に高ければ、これらの中性水素ディスクは星形成の燃料となる可能性があります。銀河は後期型から初期型へと進化するという一般的な考え方に反して、これらの中性水素を溜め込んでいる銀河は恒星ディスクの成長を引き起こし、その結果、銀河が初期型から後期型へと形態を変化させるきっかけになると考えられます (Cortese & Hughes 2009; Fang et al. 2012; Salim et al. 2012)。このような背景から、最近の多くの研究では、初期型銀河の外側のディスクに恒星形成領域が存在することが注目されています (Salim & Rich 2010; Lemonias et al. 2011; Moffett et al. 2012; Salim et al. 2012)。

図3. 上:NGC4203の合成g′+r′メガカメラ画像に赤でダストレーンを重ねたもの。この画像には、銀河の東側にある崩壊した伴銀河の矮小銀河も写っています。下。メガカムのg′バンド画像と、NGC4203の残像マップ。これは、伴銀河の二つの潮汐尾と同じ方向です 。白い棒は1分角の長さを示しています。

広域画像の矢印が指し示す伴星雲は壊滅して、NGC4203に取り込まれつつあります。が、この研究では、伴星雲からHIは供給されてはおらず、外部ディスクにHIを供給しているのは、銀河間物質の降着の可能性が考えられるとしています。

銀河が初期型から後期型に進化する。など考えたこともありませんでしたよ。銀河の形態進化を楕円銀河などの初期型から渦巻銀河などの後期型に進化する、とハッブルはしました。が、それは間違いで後期型銀河から初期型銀河へと銀河は進化し、初期型銀河は年老いた星で形成されている。と、習いましたからねえ。今でも大概の天文辞典などにはそう書いてあるでしょう。定説や情報を盲信することなく、様々な方向から事実を自ら確かめることが大切なのですね。

NGC 4227(銀河)明るさ:13.7 mag, 大きさ:1.5′ x 0.9′, 分類:SAB0^0^:, z 0.021515, 推定距離:約2億9千6百万光年(NED), 96.5.Mpc, RA 12h16m33.696s,  DEC +33d31m19.44s (J2000.0), 視野角:  8′ x 5′ ↑ N

NGC 4229(銀河)明るさ:14.0g mag, 大きさ:1.3′ x 0.8′, 分類:S0/a, z 0.022579, 推定距離:約3億9百万光年(NED), – -Mpc, RA 12h16m38.790s,  DEC +33d33m39.23s (J2000.0)

広域画像では視野外ですが、NGC 4203の近くにある銀河です。およそ3億光年ほどの距離にあるグループの銀河です。グループと言っても周囲に関連する銀河は存在せず、おそらくこの2個の銀河だけでグループを形成しています。

かみのけ座  ファインディングチャート
Pentax PDA50-135mmf2.8(50mm f4.5), Pentax K5IIS(ノーマル), ISO3200, 90s x 8=12分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2020/05/24, +10.0℃, 東御市・観測所 ↑N

コメントを残す

コメントを投稿するには、以下のいずれかでログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中