Sh 2-105(NGC 6888・散光星雲・はくちょう座)

Sh 2-105(NGC 6888・散光星雲・はくちょう座)
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s (新改造), ISO12800, 30s x 45=24m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2020/06/17, 01h 51m, +14.0℃, 東御市 / 観測所, 視野角: 77 ′ x 51 ′ ↑ N

Sh 2-105(NGC 6888・散光星雲・はくちょう座)とその周辺
TS FSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70 (改造), HEUIB-II, ISO3200, 90s x 16= 24m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2020/06/17, 01h 51m, +14.0℃, 東御市 / 観測所, 視野角: 4.2° x 2.8°(広角カメラ), ↑N

Sh 2-105 (NGC 6888), 明るさ:–mag, 大きさ: 18′, 分類: HII(WR), RA 20h 12m 02.4s DEC +38d 20m 59s (J2000.0)

シャープレスカタログのSh 2-105は、=NGC6888で三日月星雲の愛称がある非常に明るい散光星雲です。この星雲は中心に見える7等星のウォルフライエ星WR 136からの強烈な恒星風によってできた泡状の星雲です。そのため、Hα輝線とともにOIIIの輝線も強く混在しているためカラーカメラで撮影すると赤紫色に写ります。Hα、OIIIだけを透過するバンドパスフィルターで撮影すれば2つの領域が分離して見えるかも知れません。これは次のお題としておきましょう。

周囲に見えているγ Cygを取り囲む赤いHII領域の散光星雲は、シャープレスカタログでは、ざっくりとSh 2-108としてまとめられていて細かな分類はされていません。DWB カタログは、 Dickel, Wendker, Bieritz (1969)によって、この領域(はくちょう座 X領域)の可視星雲169個をカタログ化したものです。

はくちょう座  ファインディングチャート
Pentax PDA50-135mmf2.8(60mm f4.5), Pentax K5IIS(ノーマル), ISO3200, 90s x 16=24分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2020/06/17, +14.0℃, 東御市・観測所 ↑N

<以下2022年6月22日追記>

Sh 2-105(NGC 6888・散光星雲・はくちょう座)

Sh 2-105 (NGC 6888) (散光星雲・はくちょう座)
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, QBPフィルター, Sony α7s (新改造), ISO25600, 30s x 60=30m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2021/06/11, 02h 00m, +14.0℃, 東御市 / 観測所, 視野角: 77 ′ x 51 ′ ↑ N

Sh 2-105, おおよそOIII+Hαの画像

Sh 2-105(NGC 6888・散光星雲), 明るさ:–, 大きさ: 18′, 分類: HII WRN, RA 20h 12m 02.4s DEC +38d 20m 59s (J2000.0)

Sh 2-105は、= NGC6888で中心に見える7等星のウォルフ-ライエ星WR 136からの強烈な恒星風によってできた泡状の電離星雲です。今回はQBPフィルターを使用したのでOIIIとHα輝線で撮影した画像となっています(正確には、フィルターの特性でHβ、SII輝線も透過しているはず)。下段の画像はOIIIとHαが分離して見やすいように色調を変えています。

Hαの強い部分では、フィラメント状の塊状構造 (Stock & Barlow2010) が見えますが、これは恒星風の相互作用によって生じた流体力学的不安定性の結果であるとされます。 塊構造を包むような星雲の外殻部のOIII発光は、ウォルフ-ライエ星の強烈な恒星風に押されて膨張する赤色超巨星時に放出した物質の衝撃によって生じています(Gruendl et al.2000; Moore, Hester & Scowen2000)。

Fern ́andez-Mart ́ın et al. (2012) は、NGC 6888 は主に3つの構造から構成されているであろうとしました。それは、(i)ウォルフ-ライエ星と赤色超巨星の段階で衝撃殻によってできた楕円形の内側破断構造、(ii)主バブルの破壊によって生じたと思われる外側の球状殻、(iii)恒星風と近くにある星間物質の相互作用によってできた星雲周囲の微弱な構造です。

RUBIO G., TOALA J.A., JIMENEZ-HERNANDEZ P.et. ら 「Unveiling the stellar origin of the Wolf-Rayet nebula NGC 6888 through infrared observations. 2020MNRAS.499..415R」によれば、NGC 6888の特性をモデル化した結果、最良のモデルは、内殻はガスだけからなり、外殻はガスとダストが混ざった二重分布である必要がありました。ダストは2つの粒径の集団からなり、1つは小さな粒径[0.002-0.008] µm、もう1つは大きな粒径[0.05-0.5] µmで構成されています。このことから、NGC 6888の質量はWR 136から放出された物質によるもので、星間物質の寄与はごくわずかであることが示唆されます。このモデルの総質量は 25.5+4.7-2.8 M☉、ダスト質量は Mdust = 0.14+0.03-0.01 M☉、ダスト/ガス比は 5.6 x 10-3 です。このことから、WR136の初期質量は50M☉以下であり、現在の単一星形成モデルと矛盾はありません。としています。

Sh 2-105 周辺
TS FSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70 (改造), QBPフィルター, ISO6400, 120s x 16= 32m, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2021/06/11, 02h 00m, +14.0℃, 東御市 / 観測所, 視野角: 4.2° x 2.8°(広角カメラ), ↑N

広角カメラの画像を見ると、Sh 2-105は、はくちょう座γ星から連なる濃厚なHII領域に囲まれていることがわかります。Sh 2-105までの距離は、約1,200 pcとされ、はくちょう座γ星周辺のSh 2-108のHII領域までの距離は、約1,500 pcとされていますから、距離データが正しいとすると比較的近い位置にあることになります。

はくちょう座 Sh 2-108, NGC 6888 付近

はくちょう座中央部  ファインディングチャート
Pentax PDA50-135mmf2.8(70mm f4.5), Pentax K5IIS(ノーマル), ASNフィルター,  ISO3200, 120s x 16=32分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,2021/06/11, 14℃, 東御市・観測所 ↑N

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