恒星像が画面上部では縦長に、画面下部では横長に歪む。200%拡大
BKP300反射望遠鏡の直焦点撮影では、画面の下部の星像が流れたように歪んで写ってしまうことが頻繁に発生していました。
画面の上部と下部で流れる方向が異なるので、おそらく望遠鏡の光軸が狂ったのだろうと予想して光軸調整を丁寧に繰り返しましたが、よくなりません。同じ光軸状態でも発生するときと発生しない時があります。
望遠鏡の光軸調整では再現性がないので、温度による主鏡および主鏡金具の伸縮で主鏡が歪んでいるのかも?と温度対策と金具の締め具合を調整しましたが、これも効果無し。
相当の期間原因不明でしたが、彗星を視野に導入するためにISO406,000のビデオモードでリアルタイムにモニターで見ながら導入し、カメラの南北方向を回転させて合わせている時に気がつきました。あれ?カメラをネジでロックすると端の星が歪む!
原因は接眼部の光軸不良でした。激安BKP300の接眼部は撮影用のがっちりした接眼部ではありませんが、カメラ一台つけるくらいなら強度的には問題ありません。しかし、50.8mmのスリーブリングの深さが浅く、コマコレクターMPCC-MK3のスリーブ(テーパー状になっている)を差しこんで1本目の固定ネジで強く固定するとコマコレクターがわずかに傾くのでした。対策としては、1本目と2本目の固定ネジをカメラモニターで端の星像を確認しながら同時に少しずつ締め込んで固定することで解決しました。
50.8mmの差し込みは、すばやくセットできて便利ですが、やはり精度的には不安があるものなのですね。(タカハシ望遠鏡のネジ地獄には、意味があるんですね)これに気がつかず、相当な数の接眼部光軸不良の写真を撮ってしまっていました、悲しい・・・。
明るい星がおむすび形になる。
外気温が高いときに明るい星が三角形のおむすび形に写ります。外気温が高いときだけなので温度による金属部品か主鏡の変形がすぐに疑われました。最初は、主鏡そのものより金属製の主鏡セルと主鏡固定ネジを疑い固定を弛めてみましたが効果無し。
次に疑われるのは、主鏡の温度順応です。春から夏は昼間と夜の温度差が激しく、昼間、暖まった主鏡が夜までに均一に冷えないため歪み、星像も歪みます。BKP300の主鏡は、シュミットカセグレンやドブソニアンなどに使われる薄い主鏡、シンミラーではなく普通の厚みがあります。それだけ、温度順応に時間がかかるので主鏡セルは下の写真左のようにスッカスッカな構造で、空気の通りがよくなっています。
スッカスッカな主鏡セルでも温度差の激しい時には冷却がおいつかないようです。さらに迷光を避けるために主鏡側にフタをつけていたのでなおさらだったのでしょう。
冷却効率を良くしかつ迷光も防げるように、セル蓋にUSB接続の静音ファンを外気が直接主鏡にあたるように取り付けました。観測開始の1時間前ほどからファンを回して冷却すると、主鏡の歪みが原因と思われる画像の悪化はなくなりました。
ちなみに、冷却ファンの速度は高低で切り替えられるので、低速で回しながら撮像もしてみましたが星像に影響は出ませんでした。温度変化の激しい夏場は冷却ファンをつけっぱなしのほうが良いかもしれません。
上記の対策を行ったあとの画像が下の写真です。
画面の4隅までほぼ、円盤像のすっきりした画像となりました。200%拡大
M 13(NGC 6205・球状星団), 光度:5.8 mag, 直径:23.2′
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s(新改造), ISO12800, 30s x 23+ 5s x 17, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2020/04/24, 22h 45m, +0℃, 東御市・観測所 視野角:77′ x 51′ ↑N
上記対策をして、疑似HDR合成をしたM13。画面の隅々まですっきりした星像となりましたとさ。あーあ、早く気がつけばよかった・・・