M 99 (NGC 4254)
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s(新改造), ISO12800, 30s x 23=12分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2019/04/03, 22h18m, -3℃, 東御市・観測所
視野角: 52′ x 35′ ↑N
M 99 (NGC 4254), 光度 10.4mag, 大きさ 5.4′ x 4.7′, 分類 SA(s)c;LINER HII, z 0.008029, RA 12h 18m 49.604s DEC +14d 24m 59.43s (J2000.0)
視野角: 約12′ x 8’↑N
M99は、おとめ座銀河団に所属し天の川銀河から約5,000万光年離れた位置にある明るい渦状銀河です。赤方偏移の値が異常に大きく、秒速2400Kmという速度で後退していて、この銀河がおとめ座銀河団の中(媒体)を通過しつつラム圧力の影響を受け水素を失っていると推測されています。
ゆるい巻の棒を持たない渦状銀河、SA(s)cに分類されている銀河ですが、一見してわかる外観の特徴は小さなバルジと非対称に西側に大きく発達した腕の存在です。2本の腕には多数の大きな星形成領域HII領域の存在が見えこの銀河が活発に星形成を行っていることがわかります。
大きく西側に非対称に発達した腕の成因としては、すぐに他銀河との重力干渉が思いつきます。しかし、密集している上に高速で移動する銀河の多いおとめ座銀河団の中でその可能性を探るのはかなり難しいようで、様々な論文が発表されていてどれも決定打とはなっていません。
いくつか、その腕の成因に関する意見を見てみましょう。
*M98の項目で触れたように、この銀河の西側に発見されたVIRGO HI21は、現在M99の大きな中性水素の尾の中にありますが、過去に接近遭遇した際にVIRGO HI21がM99からガスを引き抜きその形も変形させたとする論。しかし、VIRGO HI21の成因と素性(暗黒銀河なのかどうか)がまだはっきりしません。
*M98(NGC 4192)と約7億5000万年前に高速で接近接触し、接触時にM99から放出された物質でVIRGO HI21が形成され(つまり暗黒銀河ではない)、同時にM99の腕は変形を受けたとする論。(Duc, Pierre-Alain;他2008/02, The Astrophysical Journal)
*2億8000万年前に近くにあるレンズ状銀河 NGC 4262に近接した重力相互作用の結果で、遭遇が終わり引き出された腕は弛緩して通常の腕に沿うようになったとする論。(Vollmer, B;他“NGC 4254: a spiral galaxy entering the Virgo cluster”.2005/09)
*外部の銀河ではなく、自身の衛星銀河を吸収合併したことによるとする論。
etc… VIRGO HI21が発見されたことで、関連するであろうM99に関する成因論も熱を帯び、百家争鳴状態のようです。
M99はスターバースト銀河には分類されていませんが、過去に他銀河と接近遭遇したために星形成率は通常の銀河の約3倍あるとされています。(上の成因論のいくつかとはと矛盾するようですが)それを裏付けるように、現在までに4つの超新星SN 1967H, SN 1972Q, SN 1986I, SN 2014Lが発見されています。
2014年にこの銀河で発見されたPTF 10fqsは、高輝度赤色新星と呼ばれるもので2つの恒星の融合によって起こると考えられ、PTF 10fqsは恒星に大きな惑星が落ち込んだ可能性があるとされています。
M 99 周辺
タカハシFSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70(改造)、HEUIB-II, ISO3200, 90s x 8 = 12分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2019/04/03, 22h18m, -3℃, 東御市・観測所
視野角:4.2° x 2.8° ↑N(広角カメラ)
さすがに、おとめ座銀河団の中心に近いので周囲にはたくさんの銀河が見えます。しかし、おとめ座銀河団の中心M86付近とM99の間は明るい銀河の存在しない、ぽっかりと開いた口のような空間が広がっています。
かみのけ座、おとめ座、おとめ座銀河団中心付近 ファインディングチャート
Tamron SP 70-200mm(85mm f4), Pentax K5IIS(ノーマル), ISO3200, 90s x 8=12分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2019/04/03, -3℃, 東御市・観測所 ↑N
12等以上の銀河をマークしています。番号が記入されている銀河は、小口径の望遠鏡で撮像してもその姿形を楽しめる対象です。四角く枠で囲った部分が「M99周辺」画像の視野枠です。