NGC 4725(銀河), 光度:9.4mag, 直径:10.7′ x 7.6′, 分類:SABab, z 0.004033
NGC 4712(銀河), 光度:12.8mag, 直径:2.3′ x 0.9′, 分類:Sc D, z 0.014623
NGC 4747(銀河), 光度:12.4mag, 直径:3.3′ x 1.3′, 分類:IBm, z 0.003966
BKP300(1500mm f5), MPCC-MK3, HEUIB-II, Sony α7s(新改造), ISO12800, 30s x 44=22分, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2018/01/21, -5℃, 東御市・観測所
視野角: 52′ x 35′ ↑N
NGC 4725(銀河), 光度:9.4mag, 直径:10.7′ x 7.6′, 分類:SABab, z 0.004033 視野角:約19′ x 13’ ↑N
地球からの距離約4100万光年の距離にある棒渦状銀河です。距離データはHSTでケフェイド変光星を使用して計測したものなので信頼のできる数値とされています。
この銀河の外観の特異な特徴は、前回記述したように腕が1本しかないように見えることです。しかし詳細に見るときつく捲かれたメインの腕は南側で2本に分かれているようにも見えます。もとは2本あった腕が進化の段階で合体したのかもしれません。
明瞭なリングに囲まれた中心核はタイプIIのセイファート銀河の特徴を示し、ブラックホールの周りの降着円盤によって発生するエネルギーで周囲のガスを電離させているものと考えられます。
超新星は、3個 SN 1940B(タイプII-P), SN 1969H(タイプI), SN 1999gs(未知のタイプ)が発見されています。
NGC 4747(銀河), 光度:12.4mag, 直径:3.3′ x 1.3′, 分類:IBm, z 0.003966 視野角:約8′ x 5’ ↑N
NGC 4747は、NGC 4725の北東に見える崩れた不規則(もしくは渦状)銀河です。距離は約4500万光年とされ、おそらく4725の伴銀河であろうとされています。彗星の尾のように引き延ばされたストリームがあること、活性の高い腕?を持つことから巨大な母銀河4725との重力的相互作用があり、4725の1本しかない腕の原因である可能性があります。
NGC 4712(銀河), 光度:12.8mag, 直径:2.3′ x 0.9′, 分類:Sc D, z 0.014623 視野角:約8′ x 5’ ↑N
NASAの赤方偏移のデータ等から距離約2億光年とされ、その値が正しいとすると実直径は155,000光年でNGC 4725の1.5倍の大きさの銀河ということになります。
しかし、経験的にはにわかに信じがたい距離データです。2億光年も離れているのに見かけの輝度は非常に高く腕も核もはっきり分離できます。さらに腕の中に見える青い星団雲が点状に分離可能でその見かけの大きさは4725のものとほぼ同じです。超巨大星団雲がいくつも存在する銀河は考えにくいので、おとめ座銀河団の銀河のようにこの銀河は固有運動が大きく見かけの赤方偏移値が距離推定にはあてにならないのでは?ないでしょうか?。
強コントラスト処理をした画像
銀河の合併残痕を検出するための手法で画像を強コントラスト処理して、淡い構造が見やすくなるようにしてみました。その結果興味深い構造が見えてきました。
NGC4747の4本の尾
NGC4747はNGC4725との重力的な相互作用によって大きく変形し彗星の尾のような構造があり、既知の尾構造 TA, TB, TC と淡い4本目の尾TDがあるようです。
NGC4725の重力相互作用の痕跡
通常の画像からは相互作用の痕跡はほとんどわかりませんが、処理画像を見るとNGC4747の方向に引きずり出されたような非常に淡い領域A2と、同じくNGC4747方向にメインの腕から飛び出たようなやや密度の高い領域A1が認められます。
NGC4747の尾TD, TCとこれらの領域は恒星ストリームで繫がっている可能性があります。
NGC4725の2本目の腕
NGC4725には腕は1本しかないとされていますがすでに述べたように通常の画像でも南側に淡い腕のような存在が見えていました。処理画像を見ると南側の棒構造端リング上から発生して銀河を1周半ほど回るメインの腕S1の他に、北側の棒構造端リング上付近から発して約半周する淡い2本目の腕S2が認められます。S2は終端付近以外は本体と重なって明瞭ではなく南端ではメインの腕S1と干渉しているように見えます。その影響かS1は南側終端付近から羊毛状銀河の腕のように円形の恒星塊が連なったような構造になっています。S2が短く明瞭でないのはNGC4747の接近遭遇によって腕は引きちぎられ、A1、A2となったのかもしれません。
NGC4712はグループ外の遠い銀河?
メインの腕S1から無名銀河G1付近へのもしくは、NGC4712との干渉痕を期待しましたが、それらしいものは見えません。恒星ストリームを検出できるほどの露出をかけていないので断定はできませんがやはり4712は遠い銀河なのかもしれません。
無名銀河G1(2個)はデータが無く距離も明るさもわかりませんが、矮小銀河のような姿からNGC4725の伴銀河ではないかと思われます。
PGC 86434 とPGC1745311 (G2)
PGC 86434は赤方偏移の値(0.00431)が測定されていて、NGC4725グループの銀河であろうとされています。SDSSの画像からは、核のない小さな不規則?銀河のように見えますが干渉を受けたような形はしていません。PGC1745311(図中G2)は怪しい位置にありますが遠方にある背景の楕円銀河でした。
来シーズンの課題
今回は20分露出でしたので、ごく淡い構造は見逃していると思います。次のシーズンは超長時間露出でNGC4725とNGC 4747の間に存在する可能性のある恒星ストリームをあぶり出してみたいものです。
参照文献など
SKY-MAP.ORG http://my.sky-map.org/?locale=EN
NASA APOD https://apod.nasa.gov/apod/ap150416.html
NASA JPL http://www.spitzer.caltech.edu/images/2355-sig05-011-NGC-4725
Anne’s Astronomy News http://annesastronomynews.com/photo-gallery-ii/galaxies-clusters/ngc-4725-by-robert-gendler/
<過去の投稿>
NGC 4725(銀河・かみのけ座)
投稿日:2016/06/09
NGC4725(銀河)9.4mag 10.4′ x 7.2’ SBab Ring
NGC4712(銀河)12.8mag 2.3′ x 54″ Sbc
NGC4747(銀河)12.4mag 3.3′ x 1.3’ SBcd
BKP300 1500mm f5, MPCC-MK3, Sony α7s(新改造)フルサイズx80%
ISO12800, 30s x 10, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII, 2016/04/08 東御市・観測所
NGC4725は前出のNGC4618と同じ腕が1本しかない銀河です。4725の本体を一周するきつく巻かれた腕は、本体の棒構造と接するところで盛んに星形成を行っていて、若い青い星の星団雲や赤いHII領域などを確認することができます。腕の先端は画面右方向に伸び伴星雲のNGC4712と繋がっているかのように見えます。棒構造を取り囲むような明瞭なリング構造が見えるので分類にはRingが付加され、中心部には巨大ブラックホールの存在が示唆されています。
伴星雲NGC4747の歪んだ形と3つの彗星の尾のような構造は、NGC4725の重力干渉によるものと推測されますがどのようなメカニズムが働いたのかは不明です。
*追記 NGC 4712は距離2億4000万光年(赤方偏移の値から)とされ、NGC4725とは関連しないとされています。が、素直にその値は信じがたい要素がいろいろあります。この項続く
NGC4725(かみのけ座・銀河)(α7s・ 新改造)
投稿日:2015/04/16
NGC4725(かみのけ座・銀河) 9.4mag 10.4’ SBab 中央
NGC4712 13.5mag 右 NGC4747 左上
Sony α7s(新改造)APS-Cクロップ ISO16000 15秒 x 12枚加算平均 BKP300 1500mm f5 MPCC-MK3 160JP 2015/03/21
かみのけ座の明るい銀河。中央に幅広い棒が見えます。α7sでは15秒露出なのでガイドはしていません、20コマ連続撮像して追尾の良いものを選んでいます。しかし焦点距離が長くなると大気差やピリオデックモーションの影響をもろに受けるので、やはりオートガイドがほしくなります。ただ面倒なのはいやなので向けるだけでOKのガイドシステムを物色中です。