Pentax K-70 で撮影する天体写真(M31, NGC6894, γ-cyg付近)

m31-k70-300-1611anNGC224(M31・アンドロメダ座・銀河) 4.3mag  160′ x 35′ Sc
Tamron SP300mm f2.8→f4, Pentax K-70(無改造)
ISO12800, 30s x 20, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2016/11/03 東御市・観測所

p-k70
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/k-70/index.htmlPentax K-70は、リコーイメージングから発売されたPentaxブランドの最新一眼レフです。APS-CサイズのたぶんSONY製2400万画素チップを搭載し最高 ISO 102400と超高感度。バリアングル液晶モニター、アウトドアモニター赤色表示、防塵防滴、アストロトレーサー搭載可能、Pentax 2桁機では初の14bit記録可能など上位機種同様(以上?)の機能を搭載してしかも普及価格、Pentaxファンならずとも気になるカメラです。

購入して一般撮影に使用してみると使いやすい!バリアングル液晶はとても便利、2400万画素の細部の写りにも少々驚きました。このカメラの売りでもある超高感度は天体写真ではどうなんだろう?赤い星雲の感度は?ということでさっそくテスト撮影してみたのが表題のM31アンドロメダ大星雲です。

ISO12800の高感度でも30秒露出を15〜 20枚ほどコンポジットしてやれば豊富な階調を持った滑らかな画像となりました。実用になる超高感度を実現しているといえます。これはよさそうです!順次詳細にみていくこととしましょう、まずはISO12800で長時間露出(30秒)時のノイズの状況をみてみます。

%e3%83%8e%e3%82%a4%e3%82%b9%e3%82%99%e6%af%94%e8%bc%83<ノイズ比較>:ISO12800 30秒、ノイズリダクションOFF、Rawから現像、300%拡大

天体写真向きと言われたK5IIs(1600万画素)よりノイズの状況は1〜2段ほど良好です。長秒時よりもノイズリダクションON時の昼間のテスト撮影(短時間露出)ではもっとはっきりと違いがわかります。ISO25600になると急激に像は悪化し、ISO6400とは顕著な画質の違いはありませんでしたので長秒時の露出ならISO12800が効率的な感度設定でした。これで画素数も2400万ありますから驚きの高感度と言っても良いでしょう。

比較撮影したSONY α7sはやはり頭抜けて低ノイズ高感度であることがわかりますが、チップは大きく画素数は約半分なので小さな銀河や惑星状星雲が苦手です。これをK-70で補完できれば最高です。

<赤Hαの感度>
rcyg-k70-300-161101白鳥座γ付近の散光星雲
Tamron SP300mm f2.8→f4, Pentax K-70(無改造)
ISO12800, 30s x 15, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2016/11/01 東御市・観測所

赤(Hα)の感度はどうでしょうか?ぱっと見の印象ではK5-IIsと傾向はとてもよく似ています。改造カメラほどではありませんが、まあまあの感度があって星野写真が寂しくなるようなことはありません。この写真ではもう少し赤色を焙り出せるはずなのですがノイズの特性でこの辺でやめておかないといけません。

ngc7000-k70北アメリカ星雲
Tamron SP300mm f2.8→f4, Pentax K-70(無改造)
ISO12800, 30s x 10, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2016/11/01 東御市・観測所

酸素輝線などの青い色も含まれる天体は何もしないと紫色になります。

<視直径の小さな天体>ngc6894-k70-2NGC6894(白鳥座 惑星状星雲)12.3mag 55.2″ 50%トリミング
BKP300 1500mm f5, コマコレクター無し,  フィルター無し, Pentax K-70 無改造
ISO12800, 30s x 15, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2016/11/03 東御市・観測所

ngc6894-k70-1611center等倍画像
視直径の小さい惑星状星雲はどうでしょう?NGC6894というマイナーな白鳥座にある惑星状星雲を撮影してみました。直径はわずかに53″ですがこと座のM57のような環と中心星がわかります。等倍にすると環が波打っている様子も見えてきます。Hαの赤とOIIIなど青が混在する星雲では星雲の色は紫になりますね、発色としてはこちらの方が正しいのですがHαをどうしても強調したい場合にはHEUIB-IIなどのフィルターで強調することができます。こういった小さい対象には高画素のチップが有利に働き良い結果が期待できます。小さな銀河や惑星状星雲にはK-70は最適でしょう。

周辺部の恒星像が悪化しているのは、望遠鏡のコマ収差と球面収差のためです。50%トリミングしても目立つものですね、F5クラスのニュートン式望遠鏡にはコマコレクターは必須です。拡大した画像の恒星像が汚いのはシンチレーションでふくらんだ恒星像を画像処理で小さくしているためです。このくらいの焦点距離になると大気の揺らぎの影響をもろに受けます、なるべく短い露出にしたいので超高感度が役立ちます。

<アストロトレーサー、星野写真>%e5%86%ac%e3%81%ae%e5%a4%a7%e4%b8%89%e8%a7%921611-k70冬の大三角と銀河
17mmf2.8-f4, Pentax K-70 無改造, アストロトレーサーによる追尾
ISO6400, 90秒x 1枚, 2016/11/04 東御市・観測所

カメラレンズによる星野撮影、アストロトレーサーとの組み合わせはどうでしょう?
ペンタックスの一眼レフにはボディ内手ぶれ補正機構を使って星を追尾するアストロトレーサーという装置があります。赤道儀が不要です、カメラと三脚だけで星を追尾してくれるので機材に制限のある旅行の時など重宝します。向ける方向、焦点距離によって追尾誤差が異なりますが1〜3分程度の露出なら問題なく追尾してくれます。

<色の偏り、色むら>
%e8%89%b2%e3%83%a0%e3%83%a9k70色ムラ, 色かぶり:現像したRawファイルを彩度+100強調

K5時代からですが、残念なことに超高感度、長時間露出時の低照度部分に色むらが出ます。他機種でも必ずあるのですが pentaxはやや不規則なパターンのために少々苦労します。これを処理せずに非常に淡い星雲を強調すると背景がムラムラの写真となってしまいます。これが改善されれば完璧なカメラなのですが、おしい!しかし普及価格帯のこの機種にそこまで求めるのは酷でしょう。

Pentax K-70は他のカメラに無い高画素と超高感度をバランスよく実現したカメラです。その特性を生かしてカメラレンズでの星野撮影、長焦点での惑星状星雲、銀河の撮影には最適だと思われます。カメラの操作性も大変よく迷うこともありません。一般撮影の性能も大きく改良されていて、天体も風景など一般撮影もという方には最良のカメラでしょう。

追記:2017年01月10日 色ムラの補正方法について加筆しました。

ngc2264-fsq-1701視野角:4.24° x 2.81° ↑N
NGC2264、クリスマスツリー星団付近の散光星雲
タカハシFSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70(改造)、フィルター無し
ISO3200, 60s x 10, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2017/01/04 東御市・観測所

Pentax K-70の色ムラとフラット補正

Pentax K-70は高感度、低ノイズで天体写真向きのカメラなのですが高感度、長秒時露出時に色のムラがかなり強くでます。カメラのノイズリダクションを使うと斑点状になり事態はさらに悪化します。

拡散板を使い薄明時に撮影するフラット補正画像(短い露出、低ISOで撮影しています)だと周辺減光は補正されますが、色ムラは再現されず、結果そのまま残ってしまいます。どうも色ムラはISO感度と露出時間に関連しているようで、カメラ内蔵の画像処理機能PRIM-IIが原因だろうと推測しました。

それでは、フラット画像も天体撮影時と同じISOと露出時間で撮影すれば同じように色ムラが再現されてこれを補正画像にすればよさそうです。拡散板をつけず夜の曇り空で撮影時と同じISOと露出時間でフラット画像をとったらどうか?と思いつき曇り空フラットを撮像してみました。どん曇りの日がなく、やむなく流れる雲を使い取得できたフラットは使用してみると完全ではありませんが色ムラの補正もしてくれました。α7sも曇り空フラットを取ってみたのですが、いつもの拡散板よりよい結果を得られました。

夜の曇り空フラットがよさそうだとわかったのですが、今回の観測中には良好な?曇りの日は無く自宅では空が明るすぎて同じ条件でのフラット撮影はできませんでした。

そこで、同様な効果が得られる方法をあれこれ考え、長焦点レンズ限定になりますが以下の方法で良好な結果を得られました。色ムラも周辺減光も同時に補正してくれます。

*色ムラ補正フラット画像の作り方
1.撮影時と同じISO感度、露出時間で視野内に星雲や明るい星の無い領域を撮影。
2.ダーク処理、コンポジット処理をする。
3.明るさの最小値フィルター(など)で微光星を消す。
4.消しきらなかった星はスポット修正ブラシで消す。
5.滑らかな画像になるようにガウスぼかし(強めに)をかける。→完成

こうやって作成したフラット画像を使用した結果が下の画像です。

rose-nf補正前

rose補正後

追記:IRフィルターの交換改造、色ムラ補正フラット使用後の写真。

sh2-190-fsq-dsf-1701Sh 2-190(散光星雲) 150′
タカハシFSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70(改造)、フィルター無し
ISO3200, 60s x 10, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2017/01/05 東御市・観測所
視野角:4.24° x 2.81° ↑N

M31-FSQ-170921M31(アンドロメダ座・銀河) 4.3mag  160′ x 35′ Sc
タカハシFSQ85ED(320mm f3.8), Pentax K-70(改造)、フィルター無し
ISO3200, 90s x 8, TS-NJP, TemmaPC, α-SGRIII,  2017/09/21 東御市・観測所
視野角:4.24° x 2.81° ↑N

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